保健科学部 診療放射線学科Radiological Technology

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【診療放射線学科】診療放射線学の聖地へ!ドイツ研修記 後編:シーメンス本社訪問とドイツ文化の魅力

はじめに
ドイツ研修記の後編では、前編に引き続き、診療放射線学の聖地巡礼の旅をご紹介します。今回は、世界有数の医療機器メーカーであるSIEMENS Healthineers本社での貴重な体験と、ドイツでの文化体験についてお届けします。
SIEMENS Healthineers本社:医療機器開発の最前線
ドイツのバイエルン州エアランゲンに本社を構えるSIEMENS Healthineersは、CTやMRIなどの画像診断機器において世界トップクラスのシェアを誇る医療機器メーカーです。
SIEMENS Med Museum:医療技術の進化を体感
私たちはまず、SIEMENS Med Museumを訪れ、SIEMENS社における画像診断機器の開発の歴史について学びました。教科書でしか見たことのなかった多種多様な装置が展示されており、まるで童心に返ったかのようにワクワクしました(写真7)。X線の発見直後は放射線の危険性がまだ知られておらず、おもちゃや見世物にも使われていたという初期の歴史も、モノクロ映画を通して知ることができました。
写真7. SIEMENS Med MuseumにてSIEMENS初のCT ScannerであるSIRETOMの
説明を受けている様子。当時は頭部の撮影に10分程度の時間を要していました。
MRI製造工場:技術の粋を集めた現場
次に、SIEMENS Healthineers本社へ行きました(写真8)。私は前職でSIEMENS Healthineersの日本支社に勤めていたこともあって、今回本社に入ることができ学生の誰よりも感動していたのではないかと思います。本社では社員食堂で提供された豪華な昼食をいただいた後、MRIの製造工場をご案内いただきました。医療機器の製造現場を訪れるのは初めての経験でしたが、整備された区画、巨大ロボット、そして傾斜磁場コイルが手作業で作成される様子など、どれもが新鮮でした。特に、巨大な超電導磁石に傾斜磁場コイルやボディコイルがミリ単位で組み合わされていく様子は圧巻で、この目で見た光景は忘れられない経験となりました。
MRI製造工場見学
写真8. SIEMENS Healthineersの本社。エアランゲンはSIEMENSの町としても知ら
れており、町の多くの人がSIEMENSに勤めています。
ドイツ文化に触れる旅
研修期間中には、ドイツの文化にも触れることができました。5月のドイツは湿度が低く、とても過ごしやすい気候でした。日没が21時半頃と日が長いため、夜遅くまで明るいことに最初は戸惑い、少し寝不足になる学生もいたようです。 ドイツといえばビールとソーセージです。本場のビール、白ソーセージ、プレッツェルなどを堪能し、ドイツ料理の美味しさに舌鼓を打ちました(写真9)。ちなみに、ビッグマックが単品で約1700円(!)という物価の高さには、一同驚きを隠せませんでした。
写真9. ドイツのホテルでの朝食。白ソーセージはミュンヘンで親しまれており、皮を
ナイフで切って食べ、プレッツェルや甘いマスタードと食べるのが定番の食べ方です。
ノイシュバンシュタイン城:おとぎ話の世界へ
研修の合間には、ディズニーのシンデレラ城のモデルとしても有名なノイシュバンシュタイン城を訪れました(写真10)。アルプス山脈の麓に建つこの壮大なお城を、Mary's Bridgeから眺めた景色はただただ感動的でした。このお城は、現実から離れた幻想的な世界を求めたルートヴィヒ二世によって建てられましたが、あまりの豪華さゆえに建設費の問題や政治的混乱を招き、彼は完成を見ることなく謎の死を遂げたという悲劇的な歴史も学びました。もしドイツを訪れる機会があれば、ぜひおすすめしたい場所です。
MRI製造工場見学
写真10. ノンシュバンシュタイン城。Mary's Bridgeからのお城の眺めは壮観でした。
ドイツの働き方から見えてくること
今回のドイツ研修で特に注目すべきは、ドイツ人の働き方です。2023年に日本のGDPを抜き、一人当たりGDPも日本を大きく上回るドイツは、非常に効率的に経済活動を行っていることが伺えます。 ドイツには「閉店法」という法律があり、基本的に日曜日は商業活動が禁止されており、労働者の権利や家族と過ごす文化が非常に重視されています。実際に日曜日にはほとんどのお店が閉まっており、ヴュルツブルク大学病院のDr.Buck先生も、どんなに忙しくても17時半には職場を離れると話されていました。短い労働時間で高い価値を生み出すドイツの働き方は、今後の日本の社会を考える上で多くの示唆を与えてくれるでしょう。
さいごに
今回のドイツ研修では、X線の発見の歴史から現在の最先端医療、そして効率的なドイツの働き方まで、本当に多くのことを学ぶことができました。この「聖地巡礼」とも言える研修は、私たち教員にとっても、参加した学生にとっても、かけがえのない経験となりました。 この研修が実現できたのは、ヴュルツブルク大学の樋口隆弘教授、山尾天翔先生、そしてSIEMENS Healthineersの川野輝喜様をはじめ、多くの方々のご支援とご協力があったからです。この場を借りて心より御礼申し上げます。ありがとうございました。 私たちはこの貴重な経験を多くの方々と共有し、日本の医療や文化について客観的に見つめ直す機会を創出していきたいと考えています。そして、今回の研修に参加した学生の皆さんが、この経験をきっかけに将来大きく羽ばたいてくれることを心から願っています。

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