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教員ブログ

臨床検査技師としての認知症の予防に関わる

 認知症患者が年々増加している。2014年現在、その患者は約460万人と推定され、社会的にも問題となっている。これは高齢者、特に後期高齢者の急増による社会的現象に伴うものでもあり、今後の高齢者対策とともに重要性を増している。
 認知症にとって最も重要な対策としては、間違いなくその発症を未然に防ぐ対策、つまり予防することである。認知症の中で最も頻度が高いのはアルツハイマー型認知症であり、この患者は発症に至る十年以上前からすでに脳内にアミロイド‐ベータが沈着していることがわかっている。すなわち、発症前から何らかの予防対策を行うことにより、発症を防ぎ、また発症時期を遅らせることが可能である。
 つい最近のことであるが、国立長寿医療研究センターと島津製作所の共同研究グループが、アルツハイマー病の発症前に有用と考えられる血液バイオマーカーを発見し、その結果が学術論文に報告された。アルツハイマー病の診断は、神経心理学デスト、CT、MRIなどの画像診断などが中心に行われ、これまでは、脳内病変を検出するバイオマーカーとしては脳脊髄液を用いアミロイド‐ベータ、タウ、およびリン酸化タウなどを測定する以外なかった。しかし、脳脊髄液検査は侵襲性が高く、日常の診断に取り入れるのは困難である。
 今回の発見は、侵襲性の低い血液検査によって、脳内アミロイド沈着と相関して血液中に上昇するタンパク質がアルツハイマー病のバイオマーカーとしての有用性が示されたのである。また、アルツハイマー病の診断に役立つだけではなく、発症前の被検者にとってアルツハイマー病に移行する可能性が判断でき、今後、認知症の検診としても利用できる可能性が高いと考えられる。
 私は、臨床検査技師として認知症の予防を推進すべく認定認知症領域検査技師の一人であり、今回の発見に関わったグループの先生方に感謝を申し上げるとともに、認知症検診をもっと普及させ、多くの方が認知症の発症を予防できるように努めたいと考える。