ときわブログTokiwa Blog

教員ブログ

わが家の啓蟄

 私の家族には、かれこれ40歳を超える陸ガメ(ギリシャリクガメ)がおります。
名をリッキーと称し、庭で甲羅干しをしながらのんびりと日がな暮らしています。
毎日、日が昇りはじめると巣穴から這い出て、太陽光線を浴び体温が上昇した頃、庭の草を食みながらノソノソとテリトリーの確認に歩きまわります。
時に、柴犬のポン助にちょっかいをだしたり、うさぎのラッキーと仲睦まじく午睡を貪るなど、さすがに先住者らしく権力を笠に庭を支配しています。

 そんなリッキーにも天敵が。それは、餌を求めて庭の上空を飛来するカラスとトビなのです。これらの大型鳥獣はカメを鷲掴みにして上空から落とし、甲羅を割って中身を食べることがあるため、その羽音を聞くたびに、カメとは思えない素早さで巣穴や草むらに避難します。さすが、ウサギとカメの競争に勝つだけのことはありますよ。これといって強い武器を持たない故の潜在能力というか危機回避能力の高さを痛感します。

 もう一つの苦手は、寒さです。日中は暖かい小春日和でも、夕方に気温が急降下した時などは、巣穴に戻れず庭のどこかで仮死状態で丸まっている姿をよく見かけます。

 冬になると冬眠で越冬します。リッキーが家族になった当初は、冷蔵庫の野菜室で冬眠をしていました。その方が外より暖かくさまざまな危険性が低いためです。しかし、家族の驚く声を聞くことが多いため、この20年ほどは庭の巣穴で冬眠しています。寒さが訪れはじめると巣穴の入り口を自ら土をかけて塞ぎ、春の訪れまでゆっくりと眠りにつきます。

 そして毎年、二十四節気の暦通りとはいきませんが、土の中で春を感じた頃、ムクッと顔を出し、暖かさを確認してから泥だらけの体と甲羅干しをはじめます。この光景がわが家にとっての春の訪れを現す風物詩となっています。家族そろってこの光景を確認できる喜びは幸せの証でもあり、わが家にとっての真の啓蟄なのです。

 さて、リッキーとほとんど同年齢の私は、めっきり体の衰えを実感しており、リッキーとどちらが毎年元気に春を迎えることができるかという意味でのライバル関係にあります。カメは万年といいますが100年近く寿命をもつといわれるリッキーです。さあどちらに軍配が上がるか。ストレスの少なさから見たら、ひょっとしてリッキーは息子世代にも受け継がれていくのか・・・

 私も負けてはいられません。毎日リッキーを尻目に、体を鍛え直さねばと気持ちを奮い立たせています。でも、人間界にはストレス以外にも色々な誘惑が多いので、この先どうなることやら・・・

 ところで、皆さんはカメの鳴き声を聞いたことがありますか?

 毎年春と秋、二回ぐらい「クヮ~」とかすかな声で鳴きます。
 その意味は、ご想像にお任せします。

                   教育学部 こども教育学科 教員