ときわブログTokiwa Blog
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アポトーシスと金色のサナギ
2016年02月01日(月)
突然ですが...細胞の"死に方"には大きく分けて二つの種類があります。
一つ目は、細胞が火傷のような外からの刺激に晒されたときに起こるネクローシス。いわゆる細胞の"事故死"。
もう一つは、細胞が自らの遺伝子に刻まれたプログラムに沿って消滅するアポトーシス。細胞の"自殺"とも言われます。
遺伝子に刻まれたアポトーシスのプログラムは、生物の体が形作られる過程で不要になった細胞を消滅させるときや、異常な細胞を処分するときに発動します。
つまりアポトーシスは決して"自殺"が目的ではなく、生物の"いのちを守る"ためのプログラムなのです。
アポトーシスの例として、細胞の塊からアポトーシスによって指が作られる現象が有名ですが、イモムシがサナギの中で蝶になるときにもアポトーシスが起こることが分かっています。
イモムシは筋肉を動かして移動するためマッチョ?な体をしていますが、マッチョに翅を付けても飛べないので?アポトーシスで取り除かれ、スリムな体が新たに作られるそうです。
ところで...お正月に石垣島に旅行しました。
訪れた植物園で、運良くオオゴマダラ(Idea leuconoe)の羽化の瞬間に立ち会えました。
オオゴマダラは沖縄諸島以南に生息する、翅を広げると10cm以上になる大型の蝶です。
成虫(蝶)は白地に黒の斑模様、幼虫(イモムシ)は黒白のボーダーに赤い斑点、そしてサナギは金色。それもくすんだ"金色もどき"ではなくて、本当に"金ぴか"。
これはサナギ自体の色ではなくて、光を反射して金色に見えているそうです。
「何故、わざわざ敵にみつかりやすい目立つ色を?」と思いきや、この蝶は体内に毒を持っていて、「私を食べたら大変な目に合うわよ!」という警戒色なのだとか。
黒白ボーダーの幼虫が、時期が来れば金色に輝くサナギとなり、その中ではアポトーシスが発動してマッチョな幼虫がスリムな蝶に入れ替わる...
どれもこれも、遺伝子DNAにACGTの4文字で書きこまれた生命の仕掛け。
生命は、まさにイリュージョンのようなリアル!
黒白ボーダーの幼虫(アポトーシス前)と、金色のサナギ(アポトーシス中)
羽化の瞬間。抜け殻となったサナギは白の半透明...
金色のサナギ(アポトーシス中)と、白地に黒い斑の成虫(アポトーシス後)