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John Snow and "The saga of missing pump" ジョン・スノウと「消えたポンプの物語」
2016年02月08日(月)
19世紀イギリスの医師ジョン・スノウ (1813-1858) に興味を持ったきっかけは、伝記がとても面白かったからです(右の写真の2冊)。
スノウは1854年のコレラが大流行していたロンドンで、感染源の井戸を突き止めた医師です。コレラという病気そのものを解明していく方法ではなく、コレラ患者の住居を地図に記していくという地道な調査と観察から、環境と病気の関係を明らかにしていきました。そして彼は感染源の井戸のポンプの使用を止めることで、感染が広がることを防いだのです。
労働者階級の家に生まれた彼は、苦学の末、医者になります。当時は階級の壁はとても高かったため、エリートたちの何倍もの時間がかかりました。彼が感染源を探して貧しい人たちが住む地区を黙々と歩き回っていた姿を想像すると「医学探偵 (medical detective) 」という言葉がまさしくピッタリだと思います。
伝記を読んで以来、ポンプの跡地を訪れてみたいと思っていました。そこは現在パブになっているとのこと(その名も「ジョン・スノウ」)。その筋向いに当時のポンプのレプリカが立っています。昨年の夏にロンドンを訪れる機会があり、私は早速その場所を目指しました。「ポンプの写真を撮って、パブでビールを飲む」という計画です。
ところがお目当てのポンプが見つからない。パブはあるのに、通り向かいにあるはずのポンプがない。どこにあるのだろう?なぜだろう?辺りをぐるぐる歩き回りました。でも結局ポンプは見つからず。しかもパブは地元の人たちで写真のような大盛況(お店の中がいっぱいなので、外で飲んでいる状態です)。この人たちをかき分けてビールを飲みに入る元気はありませんでした。
後になってジョン・スノウ協会のホームページを開いて謎が解けました。ポンプは周辺の工事のため一時撤去されていたのです。会員たちからも、「ポンプがない!」という報告が寄せられていたようです。"The saga of missing pump..." というのは事情を説明した会報記事の見出しです。小説のタイトルみたいですね。
叶わなかったことは心に残ります。いつか必ずポンプの写真を撮ろう、そしてパブに入ろう、と決めています。ただし、次回は週末の夕方は避けなければ。仕事帰りに「ちょっと一杯」 は世界共通のようですから。