保健科学部 医療検査学科Medical Technology

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【医療検査学科】国際的視野を持つ細胞検査士を目指して

 2019年3月に医療検査学科を卒業された宮尾章汰さんが、American Society for Clinical Pathology(ASCP)が認定する国際資格、ASCP InternationalのCytotechnologist(CT)に、今年7月に合格されました。宮尾さんは、卒業後わずか数年の間に複数の国際学会で発表を行い、「Best E-Poster」を受賞された経験もあります。現在も国際的に精力的な活動を続けておられ、このたびご依頼のうえ、以下の体験記をご執筆いただきましたので、ご紹介いたします。

宮尾章汰(大阪府済生会中津病院 検査技術部) 
 私は大学3年次に「国際保健医療活動Ⅱ」の一環として、アメリカ・ボストンでの海外研修に参加しました。この経験は、私の価値観や将来の方向性に大きな影響を与える転機となりました。現地の病院では、アメリカの医療制度や先進的な技術に触れる機会があり、「世界の医療はここまで進んでいるのか」と強い衝撃を受けるとともに、「もっと広い視野で学びたい」「将来は国際的な舞台で貢献したい」という思いが芽生えました。この思いは現在も変わらず、私の原動力となっています。
大学在学中には細胞検査士養成課程を修了し、細胞検査士資格を取得しました。卒業後は一般病院の病理検査室に勤務し、細胞診業務に携わっています。細胞診とは体から採取した細胞を顕微鏡で観察し、がんなどの疾患を早期に発見するための検査です。一つひとつの細胞に真摯に向き合い、見落としのないよう慎重に診断を行うこの仕事には大きな責任が伴いますが、それ以上に強いやりがいと誇りを感じています。
 現在は日常業務に加えて国際学会での研究発表にも積極的に取り組んでいます。直近の2年間では韓国2回、台湾2回、イタリア1回と、計5回の国際学会で発表する機会をいただきました。2025年5月にはイタリア・フィレンツェで開催された国際細胞学会(ICC 2025)において、体腔液細胞診における新しい診断報告様式の運用と課題について発表しました。この際、公益社団法人日本臨床細胞学会よりトラベルグラント(旅費支援の奨学金)をいただき、貴重な機会を得ることができました。発表内容は高く評価され、「Best E-Poster」を受賞するという栄誉にもあずかりました。
 世界中の病理・細胞診の専門家と直接意見を交わす中で、自身の未熟さを痛感すると同時に、多様な視点に触れることで視野がさらに広がったことを強く実感しました。またアメリカの細胞検査士国際資格である CT(ASCP) にも合格しました。この試験を通じて、英語力だけでなく、細胞診に関する基礎から応用までの幅広い知識を体系的に学び直すことができ、細胞診への理解がより一層深まりました。
私は異なる文化や価値観に触れることで、自らの思考や視点が豊かになると信じます。そして日本をより深く理解するためには、国外の世界を知ることが不可欠と感じます。国際的な視点から見つめ直すことで、自分自身や日本の臨床検査の強みや課題がより鮮明に浮かび上がるからです。
今後はAI(人工知能)や遺伝子検査といった新たな技術分野の学びにも力を入れ、臨床現場にとどまらず、研究や教育の分野においても幅広く貢献できる細胞検査士を目指してまいります。将来的には、国や言語、文化の壁を越えて活躍できる、柔軟で国際的な視野を備えた細胞検査士として成長していきたいと考えております。
 最後に、日常業務に加え、研究活動に対してもご指導を賜り、また頻繁な海外出張に際してもご理解とご配慮をいただきました大阪府済生会中津病院 検査技術部の皆様に心より感謝申し上げ、ご報告を締めくくらせていただきます。

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