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教員ブログ

子や孫の未来に向けて

 脳トレをかねて朝日新聞の天声人語ノートをやりはじめて3年になる。
 2013年10月21日の天声人語は、美智子皇后が79歳の誕生日にあたって記者の質問への解答として寄せられた一文についてであった。美智子妃はこの1年で印象に残ったことの一つに憲法論議を挙げられ、論議の様相に注目されながら、五日市草案のことを「しきりに思い出しておりました」と記され、「長い鎖国を経た19世紀末の日本で、市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして、世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います」と結ばれたという。五日市憲法草案は、明治憲法の発布前、自由民権運動が盛んなころ民間では数々の草案が競うように書かれ、その「私擬憲法」の一つだという。西多摩の有志が研究し討議し練り上げたもので、何人も侵せない基本的人権の尊重や、法の下での平等をはっきりと謳っているという。その条文は「日本国民ハ各自ノ権利自由ヲ達ス可シ他ヨリ妨害スベカラス且国法之ヲ保護スベシ」とある。美智子妃の豊かなそして確かなにヒューマニズムを土台とする学識に頭が下がるとともに、自分としては、2013年の国勢の動きの中で、国民の人権が損なわれ、自由や平等が変形していくという危機感の中で、祷りも似た強い希い(ねがい)を受け取った気がする。
 真珠湾攻撃で始まった太平洋戦争開戦から72年、もはや戦後ではないと言われて久しい。その中で「秘密保護法」というとんでもない法律が現憲法のもとで国会を通過した。今まさに戦後ではなく戦前ではないかと心が落ち着かない。子や孫の未来に向けて、戦後を生きてきたものとして何をすべきかを考えないわけにはいかない。