ときわブログTokiwa Blog
教員ブログ
この秋は
2014年09月08日(月)
9月も2週目に入り、虫たちの顔ぶれも変わり鳴き声も静かになってきました。
朝夕、ひんやりとした秋の風がここちよくからだに伝わってきます。
数日前の新聞に、「秋は喨喨(りょうりょう)と空に鳴り...」と高村光太郎の『道程』から冒頭の部分が引用されていました。「喨喨と」は音がほがらかに遠くまで響き渡るということです。せっかくですので、おわりまで。
秋は喨喨と空に鳴り
空は水色、鳥が飛び
魂いななき
清浄の水こころに流れ
こころ眼をあけ
童子となる
多端粉雑の過去は眼の前に横はり
血脈をわれに送る
秋の日を浴びてわれは静かにありとある此を見る
地中の営みをみづから祝福し
わが一生の道程を胸せまつて思ひながめ
奮然としていのる
いのる言葉を知らず
涙いでて
光にうたれ
木の葉の散りしくを見
獣の嘻嘻として奔(はし)るを見
飛ぶ雲と風に吹かれるを庭前の草とを見
かくの如き因果歴歴の律を見て
こころは強い恩愛を感じ
又止みがたい責めを思ひ
堪えがたく
よろこびとさびしさとおそろしさに跪(ひざまづ)く
いのる言葉を知らず
ただわれは空を仰いでいのる
空は水色
秋は喨喨と空に鳴る
高村光太郎「秋の祈」
心穏やかな時には、自然の中のたくさんの音が聞こえてきますし、季節の移ろいも目に入ります。この秋の美しさを楽しみたいものです。
E科教員