ときわブログTokiwa Blog

教員ブログ

この秋は

9月も2週目に入り、虫たちの顔ぶれも変わり鳴き声も静かになってきました。

朝夕、ひんやりとした秋の風がここちよくからだに伝わってきます。

数日前の新聞に、「秋は喨喨(りょうりょう)と空に鳴り...」と高村光太郎の『道程』から冒頭の部分が引用されていました。「喨喨と」は音がほがらかに遠くまで響き渡るということです。せっかくですので、おわりまで。

 秋は喨喨と空に鳴り

空は水色、鳥が飛び

 魂いななき

 清浄の水こころに流れ

 こころ眼をあけ

 童子となる

 多端粉雑の過去は眼の前に横はり

 血脈をわれに送る

 秋の日を浴びてわれは静かにありとある此を見る

 地中の営みをみづから祝福し

 わが一生の道程を胸せまつて思ひながめ

 奮然としていのる

 いのる言葉を知らず

 涙いでて

 光にうたれ

 木の葉の散りしくを見

 獣の嘻嘻として奔(はし)るを見     

 飛ぶ雲と風に吹かれるを庭前の草とを見

 かくの如き因果歴歴の律を見て

 こころは強い恩愛を感じ

 又止みがたい責めを思ひ

 堪えがたく

 よろこびとさびしさとおそろしさに跪(ひざまづ)く

 いのる言葉を知らず

 ただわれは空を仰いでいのる

 空は水色

 秋は喨喨と空に鳴る

                            高村光太郎「秋の祈」

 

心穏やかな時には、自然の中のたくさんの音が聞こえてきますし、季節の移ろいも目に入ります。この秋の美しさを楽しみたいものです。           

E科教員