ときわブログTokiwa Blog

教員ブログ

歯科衛生士業務

 私は歯科医院で約17年間、歯周疾患の患者さんを中心に歯科衛生士として仕事をしてきた。歯周疾患の方にはまず、最初に現状の説明、今後の治療の進め方、そして本人のプラークコントロールの重要性を理解してもらうことである。縁上、縁下の歯石をきれいに除去しても、プラークコントロールが上手にできていなければ、歯周疾患の進行を止めることはむずかしい。そこで私はいつも患者さんに歯肉から上の見えている部分の清掃はあなた、歯肉の中(歯周ポケット)の汚れについては定期的に私がきれいにします。と伝えて、患者さん自身に責任を持ってもらうことにしている。

分担のように責任が課せられるので、歯ブラシの当て方を指導したりすることはないが、自分自身で工夫してきれいに清掃できるようになる。それでも最初が肝心なので、ブラッシングの重要性はかなり熱く、語っておかないと治療がスムーズにいかない。

そんな中で心に残っている一人の女性がいる。まったくの初診で現状の説明、基本検査、となにひとつできないで初診の時間が終了してしまったケースである。ひとりのチェアータイムは30分、事前にレントゲン写真は見ていたので、歯周疾患の病状でいうとP3(P1~P4で表す)で骨吸収の進んでいることもあり、少し大変かも・・・と思いながら、本人の口腔内を見て私は「ここは何度も腫れて、大変な想いをしてきたのでは?」と言った途端に彼女はぽろぽろと涙を流せれてしまい、当日は治療することができずにお話をお聴きして終了になってしまった。こどもさんが難病に罹り、病院の入退院を繰り返していて、自分の歯が腫れて痛くて、歯科受診しなければと分かっていても受診することができなかったことを説明して下さり、今回受診してきたということはこどもさんは元気になられたということを確認し、私は次回から治療を進めていくことと元気になられたお子さんにもお会いしたいと伝えて、医院でもつきあいがスタートした。歯は28本残っていたので8ブロックに分けて、クリーニングしていく中で彼女は早々に3回目の来院時にこどもさんと来院して下さり、キャンセルはしない、ブラッシングは本当に丁寧にきれいにしてくる、リコールになってもきっちり来院して下さり、その後歯は腫れることなく、動揺もなく、安定して維持できた。私は彼女に指導らしいことも、説明も丁寧に実施せずにクリーニング中心になってしまっていたにも関わらず、うまく進められたのは患者さんとの信頼関係が初日にできていたからだと実感したケースである。