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教員ブログ

カイロウドウケツとタコブネ

 今年も残すところあと2月余り、お年玉つき年賀はがきが売り出され、書店や文具店には手帳やカレンダーも並び、何だか気忙しくなってきました。
 毎年、年末にある科学機器メーカーのカレンダーを分けてもらいます。毎年、鳥であったり、テントウムシであったりと、テーマにあわせて365日異なった種類の生き物のイラストが添えられています。2014年は「日本の海の多様な生物」ということで、魚はもちろんクラゲ、蟹、海老・・・の江戸時代の図がアイウエオ順に並んでいます。カレンダーが届いたら、まず自分の誕生日の生き物は何かしら?と確認するのが楽しみなのですが、今年は・・・・細長くて穴の空いた得体の知れないもの。名前はカイロウドウケツ、何だ、これは?ということで、インターネットで調べてみました。すると海綿の一種で、真っ白でとても繊細なレース編みのような袋状のものということが分かりました。また、この袋には雌雄一対の海老・ドウケツエビが棲み、その一生をこの中で過ごすのだそうです。カイロウドウケツとは「偕老同穴」と書き、夫婦が仲むつまじく共に老い、死んだあとは同じ墓に葬られるという意味で、ドウケツエビはまさしくカイロウドウケツを体現しているというわけです。
 美しいカイロウドウケツを見ていて、実家の居間にある「貝殻」を思い出しました。こちらは繊細なヒダをらせんに刻んだ美しい造形物です。大きい方は横幅が20cmほどもあります。その形からオウムガイの一種と思い込んでいたのですが、母に尋ねると「タコブネ」と言います。蛸の舟? 貝殻を作る蛸がいるのか?というわけで、またインターネットで調べてみるとやはりタコブネでした。メスのタコが足から出る分泌物で作る殻で、これで卵を守るそうです。昔々山陰の漁師町に住む祖母が今年はタコブネが大量に上がったといって、薄くてすぐに割れてしまいそうなタコブネを柔らかい布に包んで大事に持ってきてくれたそうです。美しい海からの贈り物を見ていていると、自分が知っているのは自然の多様性や豊かさのほんの一部分、知らないところに不思議な世界がもっと拡がっているのだと感じます。

医療検査学科教員