短期大学部 口腔保健学科Oral Health

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【口腔保健学科】解剖学実習

 G20が行われ厳戒態勢にある中、また、近畿地方が例年より遅い梅雨入りの中で、令和元年6月29日、大阪歯科大学樟葉学舎において、今年で3回目になる遺体解剖見学実習が行われました。昨年までは、本学科1年生の解剖学講義を補完する形で行われてきましたが、本年度から、本実習は本学科1年生の人体の構造(解剖学)講義内に組み込み、当学科の「いのちを大切にする温かく豊かな感性と知性を備えた、資質の高い歯科衛生士を養成する」という教育理念を体現する場として、大阪歯科大学解剖学教室のご協力のもとで行いました。新入生にとっては初めての学外実習であり、ご遺体への感謝と尊厳を抱き、緊張感に包まれた(引率側も!)半日を過ごすことになりました。解剖の講義も終盤に差し掛かる時期で、事前に本実習を受けるにあったってのレポートを提出させ、本実習の意義を学生自身にも考えさせたうえで、当日を迎えることになりました。事前レポートからは、ご遺体への敬意と畏怖の念ならびに、講義ではわかりにくかった内容に対する期待を込めた内容の記載が多く、本実習に対する学生の期待感をにじませるものでありました。
 当日は天候に恵まれ、午前9時20分の集合時間に、皆、これから経験するご遺体との対面に向けて、いつもよりも緊張した様子がうかがえました。
 解剖学実習室は非常に清潔に管理されており、独特のにおいも少なく、学生たちにとって理想的な環境下で実習は開始されました。大阪歯科大学「黄菊会」(遺体提供の会)より提供され、布で包まれたご遺体10体を前に、初めに黙祷を捧げ、戸田准教授から実習を始めるにあたっての心得を説明されました。次に、いよいよ目の前のご遺体に恐る恐る触れる学生の、畏怖と好奇心の入り混じった表情を読み取ることができました。想像していたよりも学生は落ち着いており、横で見ていた私の方が、学生が卒倒しないか心配で落ち着きのない状態でした。
 ご遺体は、同歯科大学学生によって、細部まで解剖が進んでおり、各臓器が取り出せる状態でした。戸田准教授のご指導のもと、まず、胸部、続いて腹部と丹念に各臓器を確認し、講義では「分からない」としか言わなかった学生たちが、お互いうなずき合いながら、実習を進めていく様子、時には積極的に戸田准教授や実習をサポートしてくださっている川島助教に質問し、納得した表情になる様子は、普段の講義ではなかなか見られない目の輝きを感じました。最後に、我々が専門的に扱う頭部を見学し、細かな部分が多いにも関わらず、実体顕微鏡に装着されたカメラを介したモニターで映し出される筋肉や神経などを目前のご遺体と比較しながら、これから医療人になるための実感を抱いたようでした。残念ながら、体調不良で参加できなかった者、約3時間の実習時間中に気分不良を訴えた者も数名おりましたが、実習はスムーズに行われ、学生たちは収穫の多い、充実した時間を過ごすことができたのではないでしょうか。
 後日、本実習に対するレポートを提出させたところ、「命の大切さを実感した」「ご遺体への感謝を忘れずにこれからも勉強していきたい」「口は全身につながっており、医療人として社会貢献していきたい」等、見学させていただいたご遺体への感謝と命の大切さを実感したコメントが多く寄せられました。また、「解剖学への理解が進んだ」「人体の構造の複雑さに驚いた、もっと勉強しようと思った」といった学習に対するモチベーションが高まったコメントも寄せられました。
学生の驚きや興味に満ちた顔は、学内の講義室では、なかなかみられるものではなく、こうした貴重な経験は、後日行いました人体の構造の講義で受講態度にも表れていました。このモチベーションを長く持続させることができれば、素晴らしい歯科衛生士、いや医療人になるのではないかと期待させるものでした。昨年度の足立特命教授の本実習に対するコメントにもあったように、本実習は今後も継続することが望ましく、希望すれば既卒者や2年生、3年生でも参加が可能になるようなシステムが構築できればと思います。
 最後に、多忙な大学教育のなか、貴重な土曜日の午前中の限られた時間を割いて、この実習のご指導をいただいた大阪歯科大学解剖学講座准教授の戸田伊紀先生および助教の川島渉先生には深謝いたします。そして、歯科大学との連携ならびに先方や学内の先生方との連絡や学生への周知など、実習準備を進めていただきました福田昌代教授、学生引率や実習中において、終始学生にさりげない心配りを図り、緊張を和らげながらご指導をいただいた柳田学教授に感謝いたします。


令和元年7月4日 執筆 八木孝和

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