保健科学部 医療検査学科Medical Technology

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【医療検査学科】実習ライブレポート病理検査

■病理検査学実習■
医療検査学科の実習内容を学生によるライブレポートでお届けします。前回に続き、医療検査学科3年の森先がお伝えします。今回のテーマは病理検査です。
病理学的検査では、生体の一部から切除・採取された組織や細胞の顕微鏡標本を臨床検査技師がつくり、病理医がそれを顕微鏡でみて診断します。この検査は病気の最終診断のための重要な情報になります!「病理検査学実習」では、この病理学的検査の知識や技術の習得のための実習を行います。
 検査する細胞や組織の標本ですが、そのままだとほとんど無色です。そのため、標本中のこれらの構造や物質には様々な色素を用いて着色を行います。これを染色といいます。今回は標本の染色方法のひとつである「免疫組織化学染色」を紹介します。
この染色は免疫反応をおこす起因となる「抗原」を検出します。ほかの染色では検出できない腫瘍やがん細胞の持つ「抗原」に結合する「抗体」を反応させることで、病変部が発色するので、組織や細胞内にある病変の場所や種類を明らかにすることができます。
 今回の実習では、臓器の腺がん細胞に存在する抗原が標本中にないか「CEA」という抗体を使って検査しました!

検査手順を簡単に説明します。
(今回は、スライドガラスにすでに標本が貼り付けられている状態から実習を行いましたが、実際に臓器の一部を切り出して、薄く切ってガラスに貼り付ける実習もあります。これを上手にこなすには技術が必要です。)

  

① 染色のための試薬を用意します。  ②トリスバッファー(TBS)で標本を洗浄します。

 

③ CEA(一次抗体=抗原に直接結合する抗体)を標本に滴下して、30分間置きます。
  抗原がある場合、この間に抗原抗体反応が起きています!

  

④ ふたたび洗浄液に標本を浸け、バイブレータの上に2分ほど置いて、振動により反応に
使われなかった抗体を除去します。

   

 ⑤ 免疫反応促進液を滴下して反応を促進させます。(10分)
 ⑥ バイブレータで洗浄して、二次抗体を滴下し10分間置きます。
   一次抗体だけの反応では発色が少ないため、二次抗体は抗原抗体反応をした一次抗体に
  結合させることで、大きな標識(目印)のようなはたらきをすることになります。
 ⑦ バイブレータで洗浄して反応に使われなかった抗体を除去します。

⑧ AECという酵素試薬を滴下し、抗原を発色させます。
抗原がちゃんと染まっていれば標本に赤みが見えてきます!

⑨ 標本を流水で洗った後、ヘマトキシリンという色素に浸けて染色します。

⑩ 流水で洗い、組織を封入します。
⑪ 封入剤(合成樹脂)を用いてカバーガラスで標本中の組織をおおいます。
  「封入」とは、染色した標本をそのまま放置すると乾燥し、観察できなくなることを防ぐために行う操作です。

染色前と染色後の標本です。
これで標本の完成です! 顕微鏡で見てみるとこのように見えます。

私たち学生が染めたものなので染まりが薄く、分かりにくいかもしれませんが、薄い赤茶色に染まっているのが陽性細胞です。染まりが薄かった原因は①固定②抗体濃度③反応時間などの影響が考えられます。

写真はp53抗体を用いて大腸癌細胞の核を染めました。こちらは陽性部分がよく染まって見えます。


病理検査学実習では、このような実習を通して染色の仕方や病変の見つけ方を学んでいます。
以上、病理検査学実習の紹介でした。

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