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健康保健センターニュース No.3 『梅毒が流行しています』

梅毒が流行しています!(注意喚起)

 近年、本邦において梅毒患者報告数の急激な増加がみられています。2014 年の報告数は1661 名(早期顕症梅毒957,晩期顕症梅毒81,無症候性梅毒613,先天梅毒10)( http://www.nih.go.jp/niid/ja/survei/2085-idwr/ydata/5673-report-ja2014-30.html )と2010 年の621 名と比べ3 倍近くに、2012 年の875名と比べると1.9 倍となっています。2015 年報告数は2692 名〔暫定値〕(早期顕症梅毒1756,晩期顕症梅毒91,無症候

性梅毒832,先天梅毒13)と2014年と比べ1.6 倍とやはり急増を続けています。性・年代別には、2010 年から13 年は男性患者の増加が顕著で、特定のコミュニティにおけるMSM(men who have sex with men)間での伝播が主な原因とされてきましたが、2014 年には男性の異性間感染の増加に伴い若年女性の報告数が明らかに増加し、2015 年には2010 年と比べ約5 倍と激増しています(別添グラフ参照)。

参考:(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/dl/leaf03.pdf )

今年になってからも各月別報告数は前年度報告数から倍増している状況が続いています。報告された梅毒感染者は生殖年齢の全てに渡りますが男性では40歳代、女性は20歳代にピークがあります。

性感染症とは

性感染症とは、「性的接触によって感染する病気」と定義されます。普通の性器の接触による性交だけではなくオーラルセックスやアナルセックスなど性的な接触で感染するすべてが含まれます。したがって特殊な状況での感染もありますが、通常の人としての営みの中で誰もが感染する病気であり、誰にでも生じ得る健康問題であるといえます。

性感染症は無症状であることも多く、自覚しないあるいは症状が軽く気が付かないということ、あるいは自覚症状があっても医療機関を受診しにくいことがあるなど、正しい治療に結びつかなかったり、感染がいつの間にか他の人へ広がってしまったりするという大きな問題点があります。また生殖年齢にある女性が罹患した場合には、おなかの赤ちゃんや出生した新生児への感染など、母子感染として次世代にも影響が及ぶことがあるということも性感染症の重大な注意点です。

梅毒とは

 細菌の仲間であるスピロヘータの一種であるトレポネーマ・パリダム(Treponema pallidum)という微生物によって起こる性感染症(STIまたはSTD)の一つです。早期に治療すれば完治するので、疑わしいときは早めの受診が大切です。

トレポネーマ・パリダムの電子顕微鏡写真(国立感染症研究所ホームページより)

症状と経過

感染後、長期間にわたって症状の出現と潜伏を繰り返すため、病期が1〜4期に分類されています。

1期梅毒

感染してから2〜3週間の潜伏期間のあと、感染した部分に初期硬結と呼ばれるかたいしこりが一個または複数出現します。ふつう男性では亀頭冠状溝、包皮内面など、女性では膣、子宮口などに出現しますが、キスなどで感染した場合には唇や舌、口腔粘膜、乳房、手指などに出る場合もあります。初期硬結は数日経つと、表面がただれて硬性下疳と呼ばれる潰瘍になります。痛みはなく見逃されることが多くあります。

2期梅毒

感染後約3ヶ月経つと、全身の皮膚にバラの花びらに似たバラ疹と呼ばれる淡紅色の斑点や、微熱、全身倦怠感、脱毛があらわれます。数ヶ月してバラ疹が消えると、皮膚からやや盛り上がった大豆大のブツブツ(丘疹性梅毒疹)ができます。このなかには、化膿したり、表面が鱗粉状になったり、やがて中心部が壊死を起こすものもみられます。丘疹性梅毒疹は、皮膚だけでなく、口腔や肛門の周囲、陰唇などの粘膜にもあらわれます。通常、この時期までに気付きあるいは発見されて治療に結びつくのがほとんどです。

3期梅毒

第2期までに治療を受けないと、約3年後には皮膚や骨、内臓などの一部にゴム腫と呼ばれる、かたいしこりやこぶのようなものが出現します。皮膚にできたゴム腫はゆっくりと増殖しながら深部組織まで破壊し、やがて破れて潰瘍となります。

4期梅毒

感染後10年以上経過すると、脳や神経が侵され、知覚障害や手足の麻痺、歩行障害、認知症状などがあらわれます。また、心臓血管系が侵されると胸部大動脈瘤や大動脈炎などを発症します。

原因

梅毒は、性交やキスなどの性的接触で感染します。食器や衣類、入浴、公衆トイレなど、普通の日常生活で感染することはまずありません。血液および血液の入った体液を介しても感染します(経血液感染)が、針刺し事故で感染した事例はこれまでありません。

治療

ペニシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリンなどの抗生物質が有効で耐性はありません。第1〜2期の早期梅毒なら、それらの薬剤を4週間ほど注射または内服すれば治ります。

早期梅毒の場合は、治療後1〜2年で梅毒血清反応が陰性になります。3期以降の梅毒では、十分な治療をして治っても血清反応が長期にわたって陰性を示さないことがあります。しかし、血清反応の抗体価が低い数値で固定した場合には治療が終了され、その後は年に1〜2回の検査を受けることになります。

生活の注意

妊娠中の女性が梅毒にかかっていると妊娠4ヶ月(胎盤完成)以降の胎児・胎盤に影響し死産や早産を起こします。また、流・死産を免れても申請時に先天性梅毒を引き起こすので妊娠早期に治療する必要があります。このため、母子手帳が交付される際に母親は梅毒血清検査を受けることになっています。先天梅毒の症例も近年みられるようになってきました。女性罹患の増加に伴う先天梅毒の増加傾向は近年米国において報告されています。今後も先天梅毒を含む梅毒全体の増加が続く恐れがあり、早い段階での対応が必要です。
 梅毒の症状は多彩であり、病期によって異なることから患者はいろいろな主訴でいろいろな診療科を受診する可能性があります。また、血清反応で感染が見つかる無症候性梅毒も増加しています。各病期で適切な診断により早期治療を施し完治させることが重要であり 、そのことが感染拡大を食い止めることに繋がります。

参考

 国立感染症ホームページ

 性感染症学会ホームページ

健康保健センターニュースNo.3