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「ノーベル賞」と「イグノーベル賞」

 ノーベル賞はみなさんも一度は耳にしたことがあることと思います。では、「イグノーベル賞」という賞があることは知っていますでしょうか? Ignoble (恥ずべき、不名誉な、の意味)をかけたノーベル賞のパロディであるこの賞は、独創的でユーモアにあふれた研究に送られる賞です。例えば2009年には「ガスマスクになるブラジャー」の開発に関する研究が賞をとっています。この題だけで、なんとなくイグノーベル賞がどんなものかわかってもらえたと思います。今日はこんなイグノーベル賞から私の好きな研究を一つ紹介したいと思います。
 私が紹介したいのは「粘菌で最適な鉄道網の設計」を行った日本人の研究です。粘菌と呼ばれる菌の餌を、東京周辺の主要な駅と同じ配置に置きます。すると、最初粘菌は餌を求めて放射状に広がっていきますが、時間がたつと、効率のよい道筋のみにネットワークを形成し、そのネットワークが現存する鉄道路線と酷似するというものです(図参照)。知能をもたないであろう原始的な生き物が、ヒトの作り出した路線と近いものを作り上げる。本当に不思議なものです。ちなみに、イグノーベル賞と侮るなかれ、この研究は歴史ある著名な学術雑誌「サイエンス」に掲載された立派な研究なのです。

 このように、生物は「効率」よく物事を運ぼうとする機構を先天的に持っているようです。昨年ノーベル賞をとった、大隅先生が発見した「オートファジー」も生物の「効率」を求めた現象の一つです。「オートファジー」(自食の意味)は細胞内に存在する不要なものを、掃除するために、大きな膜で包み込み、分解し、新しいものの材料として再利用する現象です。ちょうど、散らかった部屋のものをごみ袋にまとめて破棄するのと同じです。さらに袋にいれたものを分解し、再利用するという近年流行りの「エコ」を、太古の昔から生き物の体の中で実践しているのですから、本当に生命の仕組みには感服いたします。
 こんなブログを書きつつ、私の部屋を見渡すと空のペットボトル、コンビニ弁当などのゴミであふれかえっています。いったい、この部屋で「オートファジー」が起こるのはいつになることやら・・・・。