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教員ブログ

軍学共同に反対する

防衛省の予算拡大が止まらない。12月22日に決定した平成29年度予算では初の5兆円を突破する。5年連続の軍拡である。一方で、将来の年金を確保するためと年金カット法を成立させ、医療費削減を声高に叫び医療・介護の患者(利用者)負担を急速に増やしていく。軍備は拡張、社会保障は削減というあまりにも露骨な政策に対して、マスコミは口を閉ざし政権におもねる姿勢をとっている。いったい、この国に良識は存在するのか。

日本学術会議は1949年の創設時、世界大戦での科学者の態度を強く反省し「戦争を目的とする科学の研究には絶対従わないこと」を決意した。その後も「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を表明している。にもかかわらず、現在その見直しが検討されている。これは、防衛省の軍事研究費「安全保障技術研究推進制度」を獲得することの是非を問うものでもある。この研究費は平成27年度の3億円から本年度は6億円と倍増したが、来年度は110億円と一気に18倍もの予算が盛り込まれた。文科省の科学研究費は一応の水準を保ってはいるが、大学の運営交付金や助成金は毎年減額され続け、研究者は資金に困っている現状がある。そこに、1件3000万円という額の防衛研究費を提示されれば心が動く。自民党内には将来100億円に増額する案もあるという。

JAXA(宇宙航空開発研究機構)は、「平和の目的に限り」という規定を2012年にすでに削除している。防衛のためなら戦争利用もありうるとの判断が国会を通過したのだ。戦争に突き進む前夜には、こんな前兆がいくつも現れるのだろう。この防衛省研究費への申請を禁止する大学も増えてきた。戦争によって科学が発達するという詭弁やデュアルユース(軍民両用)という甘言に騙されてはいけない。「強い日本を取り戻す」を掲げて戦争の悲惨さを風化させる輩に、研究者は決して魂を売り渡してはいけない。